
AI SaaS系のアーリーフェーズの企業にBiz職での転職で気を付けたいこと
「幅広い経験ができそう」「裁量が大きそう」——アーリーフェーズのスタートアップへの転職には、こうした期待を抱く方が多いと思います。
私自身も、アーリーステージのスタートアップに飛び込み、さまざまな経験をさせていただきました。その立場から言えば、この選択そのものには賛成です。
一方で、周囲の話を聞いていると、「飛び込む前に知っておきたかった」と感じるポイントもいくつかあります。
この記事では、AI SaaS領域を含むアーリーフェーズの企業に、Biz職(セールスやカスタマーサクセスなど)として転職する際に気をつけたいことを、経験者の視点から整理します。
そもそも「アーリーステージ」とは、どのフェーズを指すのか
ビジネス職での転職で最も一般的なのは、プレAやシリーズAのフェーズの企業への転職ではないでしょうか。
もう少し具体的に言うと、リリースしたプロダクトやサービスがお客様に受け入れられ、PMF(プロダクトマーケットフィット) を確認できている段階です。これから、セールスやサクセスの採用にアクセルを踏もうとしているタイミングの企業、とイメージしていただくと良いと思います。
このフェーズで「メンバー」として採用されるビジネスサイドの人に、足元で求められるミッションは、経営者や創業メンバーが上げてきたセールス・サクセスの成果を再現し、その再現性を仕組みとして構築・アップデートしていくこと です。
そして、成果の再現性とその前提条件が確認できると、企業はさらに採用のアクセルを踏み、メンバーが増えていきます。そのため、次第にマネジメントとしての役割も求められていきます。
ただし、当然ながらスタートアップは失敗が前提です。想定通りにはうまくいかない会社の方が、むしろ多いのが現実です。
こうした前提を踏まえると、気をつけたいのは大きく2点。①事業が想定通りに進まないリスク と、②役割に対する期待値のギャップ です。
気をつけたい点① 事業が想定通りに進まないリスク
「擬似PMF」——PMFしたと思ったが、実はしていなかった
PMFを達成したと思っていたものの、実はできていなかった、というケースです。
問い合わせ件数が増えたり、デモでお客様の反応が良かったりするため手応えを感じるのですが、1年後に想定以上のチャーン(解約) が出る、といったことが起こります。
既存プロダクトで狙えるマーケットが、想定より小さい
特定のユースケースではお客様の業務にうまくフィットしているものの、同じようなオペレーションを取る潜在顧客の数が少なく、想定よりマーケットが小さい、というケースです。これは、マーケットの主語を大きく捉えすぎている ことが原因のことがあります。
たとえば、ひとくちに建設業界と言っても、その中には建築も土木も含まれます。建築の中にも、戸建て住宅を主に手がける工務店もあれば、商業施設やマンションを手がけるゼネコンもあります。不動産でも、分譲と賃貸ではまったく違います。
このようにセグメントが異なれば、当然、業務の流れも、扱う帳票類も、使っているソフトウェアも異なってきます。
経営者や一部の創業メンバー「だから」売れていた
言い換えれば、セールスメンバーとして採用された人が、まったく売れないというケースです。
営業のイネーブルメント(育成)で解決できれば良いのですが、その原因が、実は最初に挙げた「擬似PMF」であることも少なくないように思います。
気をつけたい点② 役割への期待値のギャップ
先に書いた通り、このフェーズで足元求められるのは、成果の再現性です。
アーリーフェーズへの転職動機として「幅広く、いろいろなことができる」という表現をよく見聞きします。ですが、経験者の立場から言うと、アーリーフェーズでやることは、極めてシンプル だと考えています。
むしろ、アーリーフェーズの企業は「今日を生きる」ことが最優先です。そのため、求められるのは「営業・営業・営業」。どのフェーズでも営業は求められますが、アーリーフェーズでは特にこの意識を持っておきたいところです。
綺麗なダッシュボードや、最適化されたオペレーション、まして個人のキャリアといったものに目を向けられるのは、もう少し先のフェーズになってから、と考えておいた方が良いでしょう。
最も避けたいのは、「同じ規模の企業を転々とすること」
ここまで、アーリーフェーズの企業へ転職する際の注意点を書いてきました。
加えて、もしキャリアを積み上げていきたい と考えているのであれば、最も気をつけたいことがあります。それは、ここまで挙げてきたような事象を繰り返し経験し、同じような規模の企業を転々としてしまうこと です。
一般的に、事業の規模が大きくならなければ、自らのミッションや仕事の中身は大きく変わらず、新しい成長機会も生まれにくいものです。
それでも、飛び込む価値はある
繰り返しになりますが、私自身は、アーリーフェーズのスタートアップに飛び込むこと自体には賛成です。ここまで挙げてきた注意点は、「飛び込むな」という話ではなく、「飛び込む前に知っておきたい」という話です。
その野心を自らの成長につなげていくためにも、第三者から言われたことを鵜呑みにせず、自分なりの判断軸を持つこと。それが、アーリーフェーズという環境を最大限に活かすうえで、最も大切なことだと考えています。