建設商社からSaaSスタートアップへ。「現場の解像度」で切り拓いたキャリア
インタビュー2026.07.16

建設商社からSaaSスタートアップへ。「現場の解像度」で切り拓いたキャリア

今回お話を伺ったのは、オフィス内装の設計施工を手がける商社から、建設系SaaSスタートアップへ転職されたY.Kさん。企業文化の大きく異なる環境にどう適応し、カスタマーサクセスからフィールドセールス、そしてマネージャーへと、どのようにキャリアを広げてきたのか。深掘りしていきます。

未成熟なプロダクト、正解のない環境、そこで求められたオーナーシップ現場の解像度。飾らないスタートアップのリアルと、そこから得たキャリアの判断軸を、率直に語っていただきました。

「エンドユーザーの姿が、最も明確に見えた」——建設からSaaSへ

ー 本日はよろしくお願いします。まずは、スタートアップに飛び込む前のキャリアから伺えればと思います。

Y.Kさん: 新卒では、オフィス内装の設計施工を手がける商社に入社し、営業や一部施工管理に従事していました。やりがいはあったのですが、ハード面(オフィスのレイアウトや内装工事)の提案だけでは、お客様の業務フローや根本的な課題解決に踏み込むのが難しいと感じるようになったんです。

折しも働き方改革やコロナ禍で業務改善のニーズが高まっていた時期で、顧客の働き方に直接貢献できるソフトウェアを扱いたいと考え、転職を決意しました。

ー よりお客様の業務に踏み込んだ提案がしたい、ということですね。数ある企業の中で、最終的に建設系SaaS企業を選んだ決め手は何でしたか。

Y.Kさん: 当時は「業務改善を実現できるソフトウェアを提供している」かつ「自分が関わってきた建設に関わる企業」という軸で進めていました。エージェントからの紹介でAI関連企業なども候補に入れていたのですが、最終的な決め手は**「プロダクトの先にいるエンドユーザーの姿が、最も明確にイメージできたこと」**。それで、建設系のSaaS企業への転職を決めました。

ー 建設系の企業からIT企業へ。扱う商材も文化も大きく変わります。転職当時、不安はありませんでしたか。

Y.Kさん: 特に不安はありませんでした。自分の力に自信があったというより、やりたかったことにチャレンジができるという理由から、ワクワクした気持ちのほうが強かったと思います。

入社してみて——「自分みたいなペーペーでも、ここまで求められるんだ」

ー ワクワクした状態で入社されたわけですね。実際には、どんな仕事から始まったのでしょう。前職と比べて、進め方にギャップはありましたか。

Y.Kさん: 入社後はフィールドセールスとして仕事をしていたのですが、進め方については、想像以上のギャップがありました(笑)。配属された部署が比較的立ち上げに近いフェーズだったこともあり、提案内容を「自ら考え抜く」ことや、自走することを求められる環境でした。最初は「自分みたいなペーペーでも、ここまで求められるんだ」と戸惑いましたね(笑)。

社内コミュニケーションにも戸惑いました。前職にはチャットの文化がなかったので、相談するにもテキストが主体である点や、何かを問い合わせするにも申請やワークフローを出さなければいけない点に、慣れるのが大変でした。

そういう環境だったので、社内の先輩や上司、同僚から情報を取りに行くことが非常に大事だと実感しました。

ー 逆に、入社前のイメージ通りだった部分はありましたか。

Y.Kさん: 会社のミッションややろうとしていることを、しっかり社員に伝えようとしてくれる姿勢は、入社前のイメージ通りでした。

社長をはじめ経営陣が現場第一を掲げていて、現場の一次情報や解像度を大切にする姿勢も、聞いていた通りの文化でした。そこに大きな納得感と安心感を持てたことは、大きかったです。

入社4ヶ月で、新規事業の立ち上げへ

ー まだ新しい環境に慣れている途中だったと思いますが、入社4ヶ月で、会社が新しい期を迎えるタイミングで、0からの新規事業チームに配属されます。当時の心境を教えてください。

Y.Kさん:「勘弁してくれぇ」って感じでした(笑)。会社として第二の事業の柱を建てるべく、新しい業種セクターへ参入することになり、数名のチームが組成され、そこに配属されたんです。当初は、何をして良いのかもわからず、何に対して不安を持てば良いのかもわからないぐらい、何もわからない状況でした。

ー 新規事業と聞くと興味を持つ方が多いですが、実態は泥臭い営業が求められる世界だと思います。実際にやってみて、いかがでしたか。

Y.Kさん: 最初は、何もできないことにもどかしさを感じていました。事業を立ち上げるって何なんだろう。私は今、何ができているんだろう。会社にとってどんな役に立っているんだろう、と。特に最初の3ヶ月は、何も役に立てていないことにストレスを抱えていました。

そんな中、他のメンバーの頑張りもあって、ファーストクライアントとなる企業様数社にご導入いただき、そのお客様のサクセス業務を担うようになりました。

ー まだプロダクトが未成熟なタイミングでのカスタマーサクセスは、非常に難しかったと思います。当時を振り返っていかがですか。

Y.Kさん: プロダクトがその業種の企業様にフィットしない部分も多く、うまくお客様の運用にのせるのが難しいこともありました。そういうときは取り繕うのではなく、機能が不十分である現状を正直にお客様に共有し、課題認識をすり合わせることを意識しました。

どこに改善点があるのか、その機能が必要となる背景は何か。一つひとつの要望と、その背景にあるお客様の業務理解、開発要望の優先順位づけを、都度お客様と目線合わせしていく。そうすることで、「今は機能として足りないけど、わかってくれているんだね」と、未来のプロダクトに期待していただけるように努めました。

その優先順位や要望一覧についても、実際に日々利用される方、職責者の方、決裁者の方と、レイヤーごとに期待値のズレが生じないよう、時には上司の協力も仰ぎながら、目線を合わせていきました。

「お客様の業務を、一緒にやってみる」——現場の解像度という武器

ー お客様と向き合い続けたわけですね。この立ち上げフェーズのサクセス活動で得た、個人としての最大の学びは何でしたか。

Y.Kさん: **お客様の業務を、一緒にやってみること。**それが最も価値がありました。

言葉ではわかっているつもりでも、実際にやってみると、どれだけ面倒くさいかが理解できる。その経験があると、その後の新規営業のときに「この作業、面倒くさいですよね」と腹から言えるんです。

現場を高い解像度で理解することが、プロダクトチームとの開発MTGや、お客様との商談において、自信を持って議論するための大きな土台になりました。事業立ち上げ当時は不安でいっぱいでしたが、今振り返ると、あの泥臭い経験は非常に有益だったと確信しています。

ー その「腹から言える」状態を手にして、今度はご自身の希望でフィールドセールスを兼務されます。サクセスからセールスへ、ミッションが変わっていかがでしたか。

Y.Kさん: 最初は、営業の案件を進めることの難しさを痛感しました。前職はルート営業がメインで、案件の進め方やお客様との合意の取り方を体系的に学んだ経験がなかったんです。そのため、新規営業を進める中で、「案件がうまく前に進まない」という壁にぶつかりました。

ー ルート営業と新規営業では、使う筋肉も違いますよね。加えて新規事業のプロダクトという難しさもある中で、どう克服されたのでしょう。

Y.Kさん: 基本的には、上司との案件MTGを活用しながら改善していきました。最初のうちは、MTGで上司に聞かれたことに答えられない状態でした。ただ繰り返すうちに、「このタイミングでこういうことを聞かなければいけないんだな」「こういう提案をすべきなんだな」とわかってくる。それをもとに現場で実践していく中で、徐々に案件が前に進むようになってきました。

上司が商談に同席できるときは、上司がお客様とどうコミュニケーションを取っているのか、現場を見ながら学んでいきました。結果的に、フィールドセールスになってから6ヶ月ほどで、成果がついてくるようになりました。

仕事が「点」から「線」になる——スタートアップで働く魅力

ー プレイヤーとして力をつけられた後、今ではセールスやカスタマーサクセス組織のマネージャー、プロダクトのプリセールスと、幅広く活躍されています。Y.Kさんが考える、スタートアップで働く魅力を教えてください。

Y.Kさん: 裁量が大きいがゆえに、幅広い仕事に携われる可能性が高いこと。そして結果的に、それが地続き感を持って仕事に取り組めることにつながる点です。

お客様に自社のソリューションを提案し、いただいた要望を製販のMTGで開発チームにフィードバックする。それが要件や仕様に翻訳され、またプロダクトに反映されていく。結果として、より多くのお客様に喜んでいただけるようになる。この一連のプロセスを経験することで、私は自分の仕事を**「線」**として捉えられるようになりました。

「線」で捉えられるようになると、目の前の仕事が、どうお客様の良い未来につながっていくのかを実感できるんです。スタートアップは裁量が大きいぶん、こうした一つひとつの「点」の業務を経験できる。それらが結果的に「線」となり、地続き感を持って働ける可能性が高い。そこが魅力だと思います。

ー ありがとうございます。最後に、もし再び新たな環境を選ぶとしたら、どのような軸で判断しますか。

Y.Kさん: 私が重視するのは**「成長率」「現場の社員との対話」**ですね。成長率が高い環境は、それだけ挑戦する機会(バッターボックスに立つ回数)が多くなります。

また、組織の整合性を見極めるために、面接官である役職者と、現場レイヤーの社員との間で、向いている方向や認識にズレがないかを確認することが、良い環境を選ぶ鍵になると思っています。

ー 挑戦の回数としての「成長率」と、組織の目線のベクトル。どちらも、面接の場で自分から確かめにいける視点ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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